
社会人として働くようになると「生産性向上」という言葉をよく耳にします。
生産性向上を図ることは仕事を効率的に進めるために欠かせない要素ですが、具体的なやり方やポイントについて知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、生産性を上げるための手法や取り組むべきポイント、成功事例について具体的に解説していきます。
「社内の生産性を向上を図りたいけど、どんなことをすればいいのかわからない」と思っている人はぜひ最後までお読みください
生産性向上とは?
そもそも生産性というのは「投入したリソースに対して挙げた成果との比率のこと」です。
したがって、生産性向上は「人材や設備、費用などを有効活用して、大きな成果を達成すること」を指しています。
生産性向上を目指すための具体的なステップは以下の2つです。
- 少ないリソースで同じ成果を上げる
- 同じリソースで今より良い成果を上げる
上記のステップはやり方が異なりますが、どちらも企業側に大きなメリットがあることがわかるでしょう。
なお、ふたつのステップのうち、どちらが良いのかは、現在の企業の状況や活用しているリソースによっても異なります。
いきなりリソースを減らしてしまうと現場が混乱することにもつながってしまうため注意が必要です。
「徐々にリソースを削減していく」か「同じリソースで良い成果を達成できたら同時並行で進めていく」ことをおすすめします。
生産性向上と業務効率化の違いは何?
生産性向上と業務効率化はよく混同されますが、実際は異なる意味を持った言葉です。
業務効率化は「仕事における無駄な作業や時間を排除して、保有しているリソースから利益を最大限上げること」を指しています。
生産性向上は簡単にいえば「リソースを活用して成果を上げること」なので、業務効率化は生産性を上げるためのひとつの手段です。
生産向上という大きな括りの一つとして業務効率化が存在しています。
業務効率化を図って不要な業務を排除し、少ないリソースから利益を最大化する努力をしていれば、自然と生産性向上につながるでしょう。
生産性向上が重要視されている理由は?
生産性向上が重要視されている背景として挙げられるのは以下の2つです。
- 少子化による労働人口の減少対策のため
- 売上・利益を最大化して競争力を高めるため
生産性向上が求められている理由を把握できれば、具体的な対策についての理解も深まります。
それぞれの理由について詳しく確認していきましょう。
少子化による労働人口の減少対策のため
経済産業省が発表しているデータによると、2050年に国内の人口は1億人以下まで低下する見込みです。
出生数が年々下がっているため、少子化は継続していくことが予想できます。
少子化とともに労働力の減少も顕著に現れており、2021年には労働力人口が前年と比べて8万人も下がっていました。
働ける世代が少なくなっていく日本で長く事業を継続するには、現在の業務を見直して人材リソースに頼らずに利益を最大化させる工夫が不可欠です。
参考:労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)平均結果|総務省統計局
参考:2050年までの経済社会の構造変化と政策問題について|経済産業省
売上・利益を最大化して競争力を高めるため
生産性向上を図る目的は売上や利益を最大化させて、株主への配当や従業員への給料を増やすためでもあります。
また、国内における競争力はもちろんのこと、他国との競争に打ち勝つためにも生産性向上が大切です。
最近では、東南アジア諸国を始めとした多様な国が経済発展を遂げており、工業製品やアパレルなどさまざまなジャンルに進出しています。
日本の実質GDP(国民総生産)は世界で3番目に高いとされていますが「一人当たりのGDP」に変えると世界で24位です。
また、GDPに国内の労働者(就業者)の数を割ることで導き出す「労働生産性」においても、2021年の日本は「78,655ドル」でOECDに加盟している38カ国中28位でした。
経済大国として認識が強い日本ですが、生産性という面においてはまだまだ問題があることがわかるため、早急に生産性向上を図ることが求められています。
参考:世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)|GLOBAL NOTE グローバルノート – 国際統計データ専門サイト
参考:労働生産性の国際比較2021|公益財団法人日本生産性本部
生産性を向上させるための方法は?
生産性向上を目指すための方法として以下の2つのことに大きく分けられます。
- 業務の流れを可視化する
- 課題を明確にして、原因が「人に依存している内容」かを判断する
現状の把握から始めて、課題や目的を明確にすることが大切です。
それぞれの方法について確認していきましょう。
業務の流れを可視化する
まずは現在の業務の流れを可視化することから始めていきましょう。
業務を1つ1つ分解し、どんな作業が必要とされていて、どれだけの時間がかかっているのか分析していきます。
業務の細分化や可視化がされていないまま次のステップにいってしまうと、客観的に問題を挙げられず、なんとなくで決めつけてしまう可能性があるので注意が必要です。
社内の課題を洗い出すには、現状の把握から始めることが重要だということを覚えておきましょう。
課題を明確にして、原因が「人に依存している内容」かを判断する
状況把握ができたら、課題を明確にしていきます。社内で生産性向上が必要だと判断したのであれば、何かしらの問題があるはずです。
課題を洗い出す際は「人に依存している内容」と「ツールで自動化できるもの」で分けておくと後で対処がしやすくなります。
また、明らかに必要のない「無駄な作業」も課題として挙げておきましょう。
それぞれのジャンルに分けられたら、以下のように対処していってください。
- 【人にしかできない作業の場合①】作業効率を上げる(ショートカットを覚える・辞書登録する)
- 【人にしかできない作業の場合②】データの管理を一元化する
- 【人にしかできない作業の場合③】タスクごとに時間を区切って、業務スピードの向上を意識させる
- 【ツールで自動化できる作業の場合】ツールを使って自動化する
- 【無駄な作業の場合】不要な業務をなくす
次の章では、上記5つの対処法についてさらに詳しく解説します。
【人にしかできない作業の場合①】作業効率を上げる(ショートカットを覚える・辞書登録する)
人にしかできない作業の場合、パソコンの操作を覚えることで効率を上げられることがあります。
ショートカットキーや辞書登録の活用など、一見細かいことでも、取り入れることで生産性をあげられる可能性があるでしょう。
「Ctrl」+「C」でコピーをしたり、「Ctrl」+「V」でペーストしたりなど、基本的なことは覚えておくことがマストです。
社内でよく使うショートカットをまとめて資料にして配ったり、パソコンの近くに置いたりしておけば、いつでも確認できるようになります。
また、辞書登録を活用する際は「お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。」など、よく使う言葉を登録しておけばわざわざタイピングする手間をなくせます。
【人にしかできない作業の場合②】データの管理を一元化する
生産性向上を図る場合、データの管理を一元化するのも効果的です。
データがバラバラに管理されていると、欲しい情報を探すだけで時間がかかってしまいます。
また、すでにあることに気づかず、資料を二重に保存してしまう可能性もあります。
余計な時間や手間がかかってしまうので、項目ごとにフォルダを分けて、いつでも欲しい情報を閲覧できるようにしておきましょう。
バラバラになったデータをまとめるのは面倒に感じるかもしれませんが、後の作業効率を考えると今すぐに始めることがおすすめです。
【人にしかできない作業の場合③】タスクごとに時間を区切って、業務スピードの向上を意識させる
業務スピードの向上を図りたい場合はタスクごとに時間を区切ることがおすすめです。
時間が限られているとタイムプレッシャーによって作業のスピードを上げることができます。
タスクごとに時間を割り振って、ダラダラと仕事をさせないようにしましょう。
どれくらい時間がかかっているのかを記録させると、効率的にできているのかが明確になってモチベーションも上がります。
ただし、あまりにも管理が厳しすぎると反感を生むこともあるので、現場で作業をしている当事者から意見をもらいつつスケジュールを決めてください。
【ツールで自動化できる作業の場合】ツールを使って自動化する
単純作業の生産性を上げるのであれば、ツールの導入が効果的です。
ビジネスツールの技術は日々進歩しているため、データ入力や簡単な資料作成であれば自動化できるでしょう。
近年では、パソコンで行う作業を効率的にするために、企業の間で「RPAツール」の導入が進んでいます。
プログラミングの深い知識がなくても業務の効率化を実行できるため、人手不足で悩んでいる中小企業やスタートアップ企業にもおすすめです。
ツールの導入による単純作業の効率化は、総務省が促進している「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の観点から見ても重要性が高いとされています。
生産性向上と同時に、他の企業と差別化を図って競争性を上げることにもつながるので、一度活用を検討してみてください。
【無駄な作業の場合】不要な業務をなくす
現状の把握や課題の洗い出しを行なった際に、明らかに不要な業務が見つかった時は削減していきましょう。
業務には以下2種類があり、成果につながるものとそうでないものがあります。
- コア業務=成果や利益に直接つながる業務
- ノンコア業務=成果や利益には直接繋がらない業務
時間だけが過ぎる無駄な会議や朝礼など、ノンコア業務に当たるものは減らしていき、コア業務に注力してしてください。
コア業務にリソースを注力することで、さらなる売上や利益UPにつながるはずです。
生産性向上の成功事例は?
実際に生産性向上を目指した成功事例として、以下4つが挙げられます。
- トヨタ自動車株式会社
- 住友電工情報システム株式会社
- GMOメイクショップ株式会社
- Rita株式会社
事例について把握しておけば、生産性向上の方法がさらに具体的に理解できます。
それぞれの成功事例について確認していきましょう。
トヨタ自動車株式会社|課題を発見しやすい組織体制を作り、無駄を徹底的に排除
日本を代表する企業の一つであるトヨタ自動車株式会社では、課題を発見しやすい組織体制を作り、無駄な作業を徹底的に排除しています。
具体的な方法は以下の通りです。
- 見える化して問題点を見つけやすい体制を作る
- 問題がある箇所な「なぜ」を5回繰り返して問う
- 無駄を排除して、余剰品を作らないようにする
上記3つのことを行うことで、無駄が少なくなり生産性向上に成功しています。
見える化によって明確になった問題点に何度も問いかけ、問題の発生理由をさらに細分化することが重要だということが分かるでしょう。
住友電工情報システム株式会社|エクセルの関数(マクロなど)を使用しミスや業務時間を削減
住友電工情報システム株式会社では、エクセルの関数を使用してミスや業務時間を削減しています。
エクセルは、情報を管理するのに役に立つツールですが、手作業で行うとヒューマンエラーや膨大なデータを扱うのが難しいです。
したがって「VLOOKUP関数」や「SUMIF関数」を活用して、業務を効率化することが大切になります。
住友電工情報システム株式会社では、エクセルの関数を用いたことで、業務時間が減っただけでなく、ミスや改ざんも防ぐことにも成功しました。
GMOメイクショップ株式会社|顧客管理ツールの導入で売上向上・会議時間を大幅に削減
GMOメイクショップ株式会社では、顧客情報をエクセルで全て管理していましたが、データの一元化ができておらず、確認する際に無駄な時間がかかっていました。
改善するために顧客管理ツールを導入し、以下の成果が達成されています。
・会議時間の短縮
・売上やアポの増加
顧客管理ツールによって顧客に関するデータをまとめて社内に共有することが可能になり、会議時間の削減に繋がっています。
また、無駄な作業が減ったことにより、売り上げやアポイントへの対応もしやすくなった成功事例です。
Rita株式会社|日程調整ツールを開発し、日程調整にまつわる業務を自動化
Rita株式会社の代表は、上場企業への会社売却を経て日程調整ツールを作成しました。
株式会社フルスピードへの売却(証券コード:2159)を経験した際、日程調整が非常に面倒だと感じたことが要因です。
日程調整ツールである「Smoothly」を開発し、日程調整作業を1クリックで終わらせることが可能になり、大幅な作業時間の削減に成功しています。
会社の売却をするときだけでなく、担当者とスケジュールを合わせることはビジネスではよくあることです。
しかし、日程調整では、スケジュールの確認やすり合わせ、お礼メールの送付などで多くの時間がかかっています。
Rita株式会社は日程調整ツールを開発し、多数の企業の業務効率化・生産性向上を支援した成功事例です。
まとめ:生産性向上に取り組んで、売上・利益の最大化を目指そう
ビジネスで売り上げアップや競合性の優位を獲得するには、生産性向上が欠かせません。
少子高齢化によって働ける世代が少なくなっていることからも、生産性を上げることが重要だと分かります。
今ある業務を見直し、無駄を省いてリソースを最大限活用していきましょう。
具体的な課題を洗い出すときは「人に依存しているのか」や「ツールで自動化すれば十分なのか」についても合わせて確認してください。
人に依存する業務の場合、簡単なショートカットや辞書登録の仕方を個人で覚えておくだけでも生産性向上につながります。
人に依存しない事柄の際は、ツールの導入で自動化できる可能性が高いので、顧客管理ツールや日程調整ツールの導入を検討してみましょう。
また、社内の生産性向上を図る場合は、各企業が過去に行った成功事例を確認し、具体的な策を考えることも重要です。

