
ビジネスでよく活用される指標である「KPI」ですが、具体的に何を指した言葉なのか理解できていない人は多いのではないでしょうか。
職種に関わらず、KPIを理解して明確な目標を定めて、日々の仕事をこなすことが大切です。
本記事では、KPIの意味や種類、設計方法について解説していきます。
「KPIについて簡単に理解を深めたい」と思っている人はぜひ最後までお読みください。
KPI(Key Performance Indicator)とは何のこと?
KPIは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」という意味です。
意味をさらに分解すると以下のようになります。
- Key Performance=達成するべき目標
- Indicator=数値で明確にしたもの
つまり、より簡単にいうとKPIは「目標を達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のこと」を指しています。
営業やマーケティングなどの、日頃から数値を重要視する職業だけに使われると思われがちですが、人事などの職種にも活用されるので意味をしっかり覚えておきましょう。
KPIの種類は?
KPIが活用される職種には以下のようなものがあります。
- 営業職
- 人事・管理職
- プロジェクト単位
- WEBマーケティング職
- カスタマーサクセス
それぞれの職種ごとのKPIを具体的に確認していきましょう。
【KPIの種類①】営業職のKPI
営業職のKIPとしてよく挙げられるものに以下のようなものがあります。
訪問件数 | テレアポやメールなどでアポイントを取った回数 |
商談数 | 直接やWeb上で商談した回数 |
受注件数 | 契約を取った回数 |
最終的な売上の目標に対して、受注件数が足りていない場合は、そもそも商談数や訪問数が足りていない可能性があるでしょう。
「なぜ十分な受注を達成できていないのか」を元にして、商談や訪問を増やすために1日あたりのテレアポ回数の増加や活用するスクリプトの見直しなどを図ってください。
【KPIの種類②】人事・管理職のKPI
人事や管理職のKPIは以下の通りです。
採用目標 | いつまでに何人採用するのか |
離職率 | 一定の期間内で離職した人数 |
従業員満足度のスコア | 企業への満足度を表した数値 |
採用目標では「どんな人物をいつまでに何人採用するのか」を具体的に定めることが大切です。
採用目標を元にして、達成までに必要な面接人数や、合格者などの数値を細かく洗い出すことができます。
また、人事や管理職として、企業内部の業務改善や評価制度の見直しを図る場合は「従業員満足度のスコア」や「離職率」などの指標が必要になるでしょう。
【KPIの種類③】プロジェクト単位のKPI
プロジェクト単位のKPIでは「いつまでに、どうやってこのプロジェクトを終わらせるのか」を明確にする必要があります。
最終的なプロジェクト終了に向けて、どんなプロセスが必要なのか細分化していきましょう。
「○日までに○○が担当業務を終わらせる」など、進捗を詳細に定めておくことが大切です。
KPIで工程を細かく分けて視覚化すれば、プロジェクトを期日までにきちんと終了させることも容易になります。
【KPIの種類④】WEBマーケティング職のKPI
Webマーケティングは、数値を参考にPDCAを回していくことが基本であるため、特にKPIが重要視される職種です。
クリック率 | 広告がクリックされた回数 |
CV数 | コンバージョンを獲得した回数 |
PV数 | メディアなどが閲覧された回数 |
Web広告を配信する場合、最終的な目標は売上や認知度のさらなる向上です。
したがって、閲覧された回数に対して広告がどれだけクリックされたのかや、コンバージョンを獲得できたのかがKPIとして重要になります。
また、自社メディアを活用している場合は、PV数をKPIとして設定することもあるでしょう。
Web広告などのKPIを通して十分な結果が得られていないことが分かった場合は、クリエイティブの差し替えや文言の変更などを加える必要があります。
【KPIの種類⑤】カスタマーサクセスのKPI
カスタマーサクセスのKPIとして、以下のようなものが挙げられます。
顧客満足度 | 顧客からの感謝の言葉やアンケート結果 |
Eメール・電話・チャット数 | それぞれのお問い合わせ回数 |
平均解決時間 | 問い合わせを解決するために必要な時間 |
エスカレーション率 | オペレーターが解説できず、上司に相談した回数 |
顧客満足度を数値で表すことは難しいと思われがちですが、アンケート結果などを参考にすれば簡単に数字で表現できます。
お問い合わせの回数や平均解説時間もKPIとして重要なので覚えていてください。
また、エスカレーション率が高い場合は何度もオペレーションを中断していることになるので、顧客満足が下がる可能性があります。
オペレーターの育成が足りていない可能性があるので注意が必要です。
KPIを設定するメリットは?なぜKPIを設定する必要があるの?
KPIを設定するメリットは以下の3つです。
- 目標・やるべきことが明確になる
- 現状を把握できる
- 目標達成できなかった時、次に向けた改善がしやすい
メリットについて把握すれば、ビジネスにおいてなぜKPIが重要だとされているのか理解できます。
3つのメリットについて順番に見ていきましょう。
目標・やるべきことが明確になる
KPIを設定すると、最終的な目標と達成するためにやるべきことが明確になるというメリットがあります。
「いつまでに何をどれだけやるべきなのか」が分かるようになるため、プロセスごとのアクションが定まるでしょう。
最終的な目標に向けて闇雲に行動することがなくなるので、業務の生産性が上がります。
また、取るべきアクションが細分化されて見える化できるので、社員のモチベーションや達成感を向上することも可能です。
現状を把握できる
KPIの設定によって最終的な目標を決定し、達成度合いを定量的に監視するようになると、現在できていることとできていないことがよく分かるようになります。
例えば、成約率が足りていないのであれば、そもそもアポイント数が足りていない可能性があるでしょう。
目標に対して1ヶ月に獲得するべきアポイント数が「20件」の場合、1日に架電するべき数も導き出すことができます。
現状を把握せずに行動を起こしてしまうと、進むべきではない方向に舵を切ってしまうこともあるので注意が必要です。
効率的に目標を達成したい場合は、KPIを設定して今を知ることから始めていきましょう。
目標達成できなかった時、次に向けた改善がしやすい
KPIの設定は、目標達成が叶わなかった時に、次の行動に向けた改善がしやすいこともメリットのひとつです。
定量的に示した数値によって、次はどうするべきなのか明確になります。
売上目標に必要なアポイント数が足りていないのか、架電の数が少ないのかなど、問題点がよく分かるようになるので、分析が容易になるはずです。
KPIから前回達成できていなかったことを参考にして、決算者とのアポ増加やスクリプトの見直しなど、具体的な改善のための行動を起こしていきましょう。
目標達成できていなかった時は、問題を振り返らずにひたすら行動をするよりも、定量的な数値を参考にした方が改善できる可能性が高いです。
KPIを設定するデメリットは?
KPIを設定するデメリットとして、以下の2つが挙げられます。
- 根拠がないKPIを立てると、メンバーのモチベーションが下がる
- 【新規事業の場合】細かくKPIを立てても無駄になる場合がある
KPIの設定には、メリットだけでなくデメリットも存在するので、事前に確認しておきましょう。
2つのデメリットについて詳しく解説します。
根拠がないKPIを立てると、メンバーのモチベーションが下がる
KPIを設定する際、根拠のない数値を定めてしまうと、メンバーのモチベーションを下げることにつながる危険性があります。
「午後の間に架電数300件」など、明らかに達成困難な数値を求められても、やる気を削ぐだけなので注意しましょう。
そもそも、KPIは「目標の達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のこと」なので、計算によって導き出された根拠が必要です。
何となくで決めた数値を共有するのでなく、現在の状況を加味した現実的な数値を提示するようにしてください。
【新規事業の場合】細かくKPIを立てても無駄になる場合がある
新規事業においては、既存事業よりも予想のように上手くいかないことがほとんどです。
中間的な指標を細かく定めてもその通りにいかなかったり、逆に軌道修正が困難になったりすることもあります。
過去のデータから成功法則を導き出すことも難しいため、新規事業の場合は大まかにKPIを設定することがおすすめです。
なお、既存事業においては、今までの状況も加味した細かいKPIを立てる必要があります。
KPIの設計方法は?
KPIを設計する場合、以下の手順を踏んでいく必要があります。
- KGI(目標)を設定する
- 現状とKGI(目標)とのギャップを把握する
- 業務のプロセスを分解して、KSF(最も重要な要素)を洗い出す
- KSFを改善するための具体案を考える
- KPI達成までのマイルストーンを敷く
- 週単位・日単位で進捗を計測する
細かい手順を理解して、適切なKPIの設計を目指しましょう。
KPIの設計方法について順番に紹介していきます。
ステップ1:KGI(目標)を設定する
KGIは「Key Goal Indicator」の略称で、日本語に訳すと「重要目標達成指標」という意味になります。
ある期間において「なにをどれくらい達成するのか」を表した最終目標だと覚えておきましょう。
例えば、企業のKGIを決めるときは「5年後に売上100億」などと表すことができます。
明確に数値を挙げてKGIを定めることが重要です。
「世界一の企業になる」などの曖昧な表現だと、定量的なKPIの細かい設定ができないので注意してください。
ステップ2:現状とKGI(目標)とのギャップを把握する
設定したKGIと現状を照らし合わせて、どんなギャップがあるのか把握していきましょう。
KGIと今のギャップを確認すれば、問題を具体的に洗い出して現実的なKPIの設定ができるようになります。
「今のところ何をどれだけ達成できているのか」を見つめ直してください。
ステップ3:業務のプロセスを分解して、KSF(最も重要な要素)を洗い出す
現状と設定されたKGIとのギャップが確認できたら、業務プロセスを分解してKSFを洗い出していきます。
KSFは「Key Success Factor」の略称で「目標を達成するために特に重要な要素」を指したビジネス用語です。
例として、業務プロセス・売上向上のための要素を挙げると「提案数」×「受注率」×「平均単価」のようになります。
挙げられた要素の中から特に重要なKSFを洗い出していくには「向上しやすい要素はどれか?」や「コントロールできる箇所・改善するとインパクトの強い要因はどれか」などの観点から探ることがおすすめです。
ステップ4:KSFを改善するための具体案を考える
KSF(目標達成のために最も重要な要素)の確認ができたら、改善するための具体案を考えていきましょう。
例えば、受注率を改善したい場合は、訪問回数やテレアポなどのアプローチ回数を改善する必要があるはずです。
KSFを「いつまでに」「どれくらい上げれば」ゴールを達成できるか計算したものがKPIになるので重要な工程になります。
ステップ5:KPI達成までのマイルストーンを敷く
具体案の策定まで完了した後は、KPI達成までのマイルストーン(中間の目標地点)を敷いていきます。
「15日までに訪問を20回」や「1週間にテレアポを500件」など、具体的な数値を使って中間指標を設定しましょう。
ある程度細かくマイルストーンを設定することで、スケジュールの練り直しができるようになります。
ステップ6:週単位・日単位で進捗を計測する
KPIの設定後は、必ず進捗を計測することが大切です。
指標を設定したのに進捗を追わないと、最終的な目標に到達するのが難しそうだった時に適切な軌道修正ができなくなってしまいます。
プロジェクトによっても異なりますが、週単位か日単位で「KPIを予定通り達成できそうか」把握していきましょう。
KPIの達成が困難だと把握できたら、数値を変えたり、業務内容の見直しを図る必要があります。
KPIツリーとは?
KPIの設計するときは「ロジックツリー」を活用するとより簡単に設計が実行できるようになります。
ロジックツリーは、問題点をツリー状で細分化して、論理的に原因と解決策を策定するためのフレームワークです。
したがって、KPIツリーは以下のような使い方ができます。
- KGIをもとに、問題点・解決すべき要素を洗い出す
- 問題点を解決するための案(KPI)をツリー上に明確にする
フレームワークを有効活用して、効率的にKPIの設計をしていきましょう。
KPIを設計するときの注意点は?
KPIを設計するときは、以下5つのことに注意することが大切です。
- 現実的なKPIであるか
- 社内でKGIの認識が揃っているか
- 簡単で分かりやすいKPIになっているか
- KPIを達成できなかった時は、必ず振り返りを行って改善する
- タスクの担当者や全体の責任者を決めておく
それぞれの注意点について解説していきます。
現実的なKPIであるか
KPIの設計をするときは、現実的な指標を定めることが大切です。
誰が見ても現実的ではないKPIを決めてしまうと、社員のモチベーション減少を招いたり、修正が困難になる可能性があります。
目標を高く設定することは重要ですが、過去のデータや計算に基づいた再現性のあるKPIの設定をしましょう。
社内でKGIの認識が揃っているか
社内で最終的な目標である「KGI」の認識を揃えることも大切です。
KGIの認識に相違があると、それぞれの社員が違う目標に向けてKPIの設定をしてしまいます。
不要なアクションを取ってしまう要因にもなるので、KGIをしっかりと共有できるように体制を整えておきましょう。
社内ミーティングや社内報で全体に情報が行き渡るようにすることが重要です。
簡単で分かりやすいKPIになっているか
目標達成のために「成約数を増やす」や「決算者との商談を取る」など、曖昧なKPIだと意味がありません。
数値を用いて、分かりやすいKPIを設定することが大切です。
「成約数が5件必要だから、1日100件の架電で、決算者との商談が月に15件は必要」など、具体的にKPIを設定しましょう。
週単位や1日の間にやるべきことまで割り出せれば、無駄な作業が減って業務の効率化にも繋がります。
KPIを達成できなかった時は、必ず振り返りを行って改善する
KPIの達成ができなかった時は、次に繋げるための振り返りと改善をする必要があります。
「KPIを達成できなかった原因」や「次回はどうすれば達成できるか」を洗い出してみましょう。
現在の業務効率が悪い場合もあれば、そもそも設定したKPIやKGIに問題がある可能性もあります。
KPIの達成が困難だった時は、多角的な視点から分析して次に活かすことが大切です。
タスクの担当者や全体の責任者を決めておく
KPIの設定時は、マイルストーンごとに責任者を決めることも重要です。
定められた各タスクごとに担当を明確にしておきましょう。
誰もやらない状況に陥らないように、責任の所在や担当者を決めて確実に実行していくことがKPI設計時のコツになります。
まとめ:目標達成のためにKPIを活用しよう!
ビジネスにおいて、最終的な目標を達成するためにはKPIの設計が必要になります。
営業やマーケティングなど、職種によっても注目するべきKPIは異なるので、事前に確認しておくことが大切です。
数値を用いた具体的なKPIを設計しないと、社員のモチベーションが下がったり、のちに修正が困難になる可能性もあるので注意しましょう。
現実的なKPIを設定できると、最終的な目標であるKGIに向けてやるべきことが明確になり、現状把握も適切にできるようになります。
また、KPIの設計時には、ロジックツリーの活用やプロセスを段階的に踏んでいくことも重要です。
達成できなかった時は、次に活かせるように分析をして改善を施していくことをおすすめします。
KPIを活用して、企業の利益向上を効率的に目指していきましょう。

