
客単価は企業が売上を考える際に欠かせない要素ですが、なかには意味や具体例について詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。
本記事では、客単価の概要や計算するメリット、実際の例について解説していきます。
「客単価の重要性は理解しているけど、詳しいことについて完全には分からない」と思っている人はぜひ最後までお読みください。
客単価とは?
客単価は「顧客が一回の購入で利用する金額」のことで「顧客単価」や「平均単価」などと呼称されることもあります。
詳しい計算方法などについては後述しますが、例えば飲食店で1,000円のピザと500円のドリンクを購入されたときは1,500円が顧客単価となります。
基本的にビジネスにおける利益は「客数×客単価」で導き出されるので、客単価を上げることは売上向上に直結するでしょう。
客単価は、飲食店などの店舗経営なども含めて、ビジネスでは重要な指標とされています。
客単価を計算するメリットは?
客単価を計算するメリットは以下の3つです。
- 適切な価格設定ができるようになる
- 自社の弱みが把握でき、売上増加につながる
- 自社商品の価値がわかり、ブランディングに役立てられる
それぞれのメリットについて解説していきます。
【客単価を計算するメリット①】適切な価格設定ができるようになる
客単価の計算をすると、価格設定を適切に行うことができるようになります。
現在の客単価の状況を確認すれば、顧客が価格設定に対してどのような印象を持っているのか分かるようになるでしょう。
客単価が想像以上に低ければ、顧客は設定された価格ほどの価値を商品に感じていない可能性があるので注意が必要です。
価格を設定する際は、安売りし過ぎないことも大切ですが、あまりにも高い値段を付けないことも重要になります。
週や月ごとの客単価も確認し、1人あたりの顧客が自社の商品にどれくらい価値を見出してくれているのか確認しましょう。
【客単価を計算するメリット②】自社の弱みが把握でき、売上増加につながる
客単価の計算は、自社の弱みの分析と売上の向上にもつなげられるメリットがあります。
客単価の分析をすると、目標の売上を達成するための対策が需要とマッチしているのかが明確になるからです。
週や月ごとの客単価を元にすれば、季節に合わせた施策などが顧客に響いているのか分かるでしょう。
「12月のクリスマスや年末年始に合わせて新商品を販売した結果、前月と比べて売上は少し上がったけど、1人当たりの購入金額が変わらない」などの情報から、マーケティングにおける今後の改善点を見出せます。
季節に合わせた新商品の提供だけで客単価が上がらない場合、「セットで商品を売ること」や「陳列を変えて関連商品が目に届きやすくする」など、より売上が上昇しそうな新しい対策も考えられるでしょう。
自社の弱みを把握して、新しい施策を見出すためにも、客単価の分析はしっかり行っていくことをおすすめします。
【客単価を計算するメリット③】自社商品の価値がわかり、ブランディングに役立てられる
客単価を算出すると、顧客が平均して使ってくれている金額を導き出せます。
結果としてどれくらいの金額設定が妥当なのかが明確になり、自社商品の価値が分かるため、今後のブランディングにも役立てられるでしょう。
ブランディングを行う際は、顧客にどのようなイメージを持たれているのかを加味することが大切です。
例えば、飲食店で「特別な日を大事な人と過ごしてほしい」というコンセプトを持っていて、想定した客単価が相場よりも高い場合、実際の客単価とのギャップを元にブランディングの対策を実行できます。
客単価の結果が想定よりも高い場合はブランディングが成功している証です。
しかし、思っていたよりも1人当たりの購入金額が低い場合、その地域や客層では、もっと低価格で馴染みやすい商品が人気になるかもしれません。
その場合は、SNSなどを活用してもう少しカジュアルなイメージを売り出す対策などが考えられるでしょう。
個人的にイメージしているブランディングも重要ですが、経営を効率的に進めたい際は、客単価を元に獲得した情報からブランディングを施すことも大切です。
客単価の計算方法は?
客単価は以下の方法で計算できます。
- 「客単価(円)=売上(円)÷客数(人)」
売上に客数を割れば簡単に導き出すことが可能です。
ただし、上記の計算方法だと何回もリピートしてくれている顧客の来店回数も含めています。
もしもリピートしている顧客も1回とカウントしながら客単価を出したい場合は、客数を「ユニーク客数」に置き換えた計算が必要です。
ユニーク客数では、一般的な客数と違って、同じ人が来店したとしても1回とみなします。
フィットネスジムなどの会員登録が必要なビジネスでは、顧客情報を元にすれば簡単にユニーク客数を導き出すことが可能です。
しかし、一般的な飲食店などの場合は、常連の顔を覚えてカウントする必要があるでしょう。
客単価を上げるために考えるべきポイントは?
客単価を上げる際に考えるべきポイントは以下の3つです。
- 顧客の数
- 1人あたりの購入数
- 1人あたりの購入金額
効率的に客単価の向上を目指すために、ポイントについて把握しておきましょう。
客単価を上げるために考えるべき3つのポイントについて順番に解説していきます。
①顧客の数
客単価は売上と客数を割ることで算出されるため、顧客が増えれば客単価も上がる可能性が高いです。
顧客を増やすための施策は業界や事業の目的によっても異なりますが、チラシやクーポンなどを活用して地道な施策をすることが大切になります。
ただし、顧客の数に注目しすぎて商品を安売りしすぎると、客単価が低くなってしまうことがあるので注意が必要です。
頻繁にお得なキャンペーンを行なっていると、顧客は商品が安い時にしか訪れてくれなくなります。
その場しのぎの顧客獲得ではなく、常に一定数の顧客を獲得できるようにすることが何よりも重要なことを忘れないようにしましょう。
②1人あたりの購入数
1人あたりの購入数が増えれば、必然的に客単価も上昇します。
すでに顧客になってくれているユーザーは、他の商品も購入してくれる可能性が高いので、工夫次第では新規顧客を獲得するよりも容易にテコ入れができます。
詳しくは後述しますが、購入数が低い場合は、関連商品をアピールして購入を促進させるクロスセルが効果的です。
ただし、新規で確度が低い顧客に対して、無理に購入数を増やすための施策をすると、反感を買う可能性もあります。
なるべく、購買意欲の高い顕在層やすでに購入したことがあるユーザーを狙って、対策をすることがおすすめです。
③1人あたりの購入金額
客単価は1人あたりの購入金額を表した数値です。
したがって、早く客単価を上げるポイントのひとつは、一度に使う金額を上げることになります。
数回来店した顧客や購買してくれたユーザーに、より高単価の商品を勧めるなどの方法を取り入れて、購入金額の底上げを図りましょう。
顧客の数や1人あたりの購入数が増えても、キャンペーン中しか顧客が訪れなかったり、低単価のものを合わせて購入させたりするだけでは、利益は大きくなりづらいです。
ユーザーが抱えている需要を読み取って、より高単価な商品をさばいていくことや、定期的に購入してくれるお客様にアプローチして購入金額の増加を目指すことも大切になります。
客単価を上げるための具体例は?
客単価を上げるには、以下4つのような方法が考えられます。
- セット売りをして単価を上げる
- 関連商品の購入(クロスセル)を促す
- 付加価値をつけて単価を上げる
- より高額な商品を勧める
客単価の上昇を目指すための方法を確認し、取り入れられるものから順次始めていきましょう。
客単価を上げるための具体例についてそれぞれ解説していきます。
【客単価を上げるための具体例①】セット売りをして単価を上げる
客単価を上げたい際は、セット売りを実行することが効果的な方法のひとつです。
「2個の商品を一緒に購入することで、本来の別々の購入金額より少し安くなる」というお得感で購入の確率を高くできるでしょう。
セット売りの手法は、複数の商品やサービスを持っているのであればすぐに実行できます。
ただし、セット売りを取り入れるときは、現場で顧客に対してメリットを明確に伝えることが大切です。
「本来1,000円の商品が2つで800円」のような表記がちゃんとユーザーに見えるような工夫をしてください。
また、セット売りをするときは、選択肢を増やし過ぎないようにしましょう。
選べる項目が多すぎると、人は「ジャムの法則」によってそもそも選択することを避けようとします。
セット売りで効率的に単価を上げるには、メリットを十分に伝えることと、選択肢をこちらからある程度絞ってあげることが大切です。
【客単価を上げるための具体例②】関連商品の購入(クロスセル)を促す
クロスセルは「商品を購入してくれた顧客に、関連商品もおすすめして購入数を上げる手法」です。
客単価を上げる際に効果的な手法のひとつとされています。
例えば、AmazonなどのECサイトで商品を購入すると「こちらの商品の購入者は〇〇も購入しています」と表示されたり、旅行券を買ったときに泊まる宿もおすすめするのがクロスセルに該当します。
一度商品を購入してくれた相手に関連したものを訴求するため、適切に行えばクロスセルは成功する確率が高いです。
ただし、明らかに不必要なものを勧めると、相手に響かないだけでなく、ブランドのイメージを下げてしまう可能性もあります。
クロスセルを実行するには、一緒に購入してくれそうな商品のデータを集めておくことが大切なので、事前準備は入念に行いましょう。
【客単価を上げるための具体例③】付加価値をつけて単価を上げる
客単価を上げるには、単純に商品の単価を上げることが効果的ですが、ただ値段を上げるだけでは顧客からの納得は得られません。
商品を購入してくれるだけの付加価値を付けてから単価を上げましょう。
資金に余裕がある場合は有名タレントの起用がおすすめです。
ターゲットに合わせて「人気を博したあの人も使用している」というイメージを定着できれば、単価が上昇しても納得できます。
また、付加価値を上げながら単価を上げる方法として「京都の宇治抹茶を使用」などのように、希少価値を向上させる手もあります。
値段の上昇によってユーザーが離れないように、単価を上げるだけの十分な根拠を提示してください。
【客単価を上げるための具体例④】より高額な商品を勧める
顧客単価を上げたい場合、一度の購入金額を上げることも大切なので、チャンスができたらより高額な商品を勧めることをおすすめします。
すでに2回購入してくれているユーザーなど、ロイヤリティが高い状態であれば高額な商品の訴求は刺さりやすくなるでしょう。
まだ十分に信頼関係が築けていない状態の顧客に高い商品を勧めても、検討してもらえない可能性が高いので、まずは買ってもらう機会を作ることが大切です。
セット売りや有名人の起用などのブランディングを活用して、見込み顧客に響くマーケティングを実施しましょう。
また、高額な商品もリピートしてもらえるように、提供している商品の品質にはこだわることも重要です。
客単価を上げる施策を考える際の注意点は?
客単価の向上を考える際は、以下3つのことに注意しましょう。
- 粗利率を考慮する
- クーポンや定期購入特典をつけてLTVを高める
- 顧客データを元にメルマガなどを配信し、顧客との接点を増やす
ただ施策を実行しても失敗に終わる可能性が高いため、注意点について事前に確認しておくことをおすすめします。
上記3つの注意事項を順番に見ていきましょう。
【客単価を考える際の注意点①】粗利率を考慮する
粗利率は簡単に言えば「売上高から原価を引いた利益」のことです。
客単価が高くても、粗利率が高くないと意味がありません。
例えば、飲食店で月の来客数が100人で売上が100万円だった場合、客単価は1万円になります。
一見すると客単価は高くて事業が成功しているように見えますが、1ヶ月で取り扱った食品の原価が100万円よりも高いと最終的には赤字です。
粗利率が低ければ低いほど、純利益が出ていないことになるので、事業はよくない方向に進んでいることになります。
粗利率が下がってしまっているときは「外注に頼り過ぎていないか」や「顧客獲得を狙い過ぎてキャンペーンを頻繁に行い過ぎていないか」を確認しましょう。
【客単価を考える際の注意点②】クーポンや定期購入特典をつけてLTVを高める
「顧客との関係が終了するまでに獲得できる利益」のことをLTV(Life Time Value)と呼びます。
客単価を上げたいと考えているのであれば、短期的な利益をひたすら追求するよりも、中長期的に顧客を惹きつけてリピートしてもらう方が効果的です。
クーポンや定期購入特典を有効活用して、LTVを高めていきましょう。
ただし、先述しましたが、顧客獲得の維持のために、安く提供することを意識し過ぎて多売薄利にならないように注意してください。
【客単価を考える際の注意点③】顧客データを元にメルマガなどを配信し、顧客との接点を増やす
客単価の向上を目指すときは、顧客との接点を増やし、自社の商品を思い出してもらうことも重要です。
キャンペーンを活用して購入に至った顧客のデータなどを参考にし、施策を行なっていきましょう。
メールアドレスがわかる場合は、メルマガで有用な情報を提供し続けることが効果的です。
Webサイトから購入に至っている場合は、リターゲティング広告の配信なども成果を期待できるでしょう。
客単価を上げたいのであれば、顧客数をできるだけ減らさないように、すでに一度購入してくれたユーザーを取りこぼさない工夫も必要です。
獲得した顧客データを有効活用して、効果的なマーケティングを行なっていきましょう。
まとめ:客単価を改善して売上を増やそう
客単価は、ビジネスが順調にできているのかを判断するための重要な指標のひとつです。
客単価を計算すれば、価格設定が正しいのかが分かったり、自社商品の価値を明確にしてブランディングなどにも役立てたりできます。
「客単価(円)=売上(円)÷客数(人)」で簡単に計算できるので、経営者や店舗運営者などに当てはまる方は覚えておきましょう。
なお、具体的な客単価を上げる方法としては、セット売りやクロスセルなどが挙げられます。
それぞれの手法にはメリットだけでなく、デメリットもあるので、自社にあった方法を模索して選択することが大切です。
また、客単価を上げる際は、粗利率の考慮やLTVを意識することも忘れないようにしてください。

